四国新聞「愛しき日本」より

権力との距離見失うメディア


新聞やテレビなど報道機関とそこで報道に携わる者は、権力と一定の距離を置かねばならない。この当たり前のことが忘れられている。新聞が新聞であるために必要なことは「権力の監視」であって権力の弁護などではない。安倍首相と報道機関の関係で、その規範が崩れてしまっている。憲法改正に対する考え方を国会で問われた安倍首相は、自らのインタビュー記事を大きく載せた読売新聞を熟読してほしい、と答弁した。半世紀、政治をウォッチしてきたが、こういう首相答弁は初めてだ。その読売新聞は、首相にとって不利な証言をした前川喜平前文科事務次官が出会い系バーに通っていたという記事を載せた。明らかに証言の信憑性を失わせようとする記事で、ソースは官邸だと言われている。そして日を置かず読売新聞の編集幹部が安倍首相と会食している。

筆者も25人の首相を取材して、歴代の首相と食事をともにしたことがなかったわけではない。しかしほとんどが首相公邸での夫人の手料理だったり、店屋物のどんぶりだったりで、料亭や高級レストランなどはない。首相動静に会食の事実が報じられ、読者は不審に思わないのだろうか。テレビの報道番組には、明らかに首相に近いと思われている人物が目立つようになった。歴代首相で最も外遊の多いのが安倍首相。同行する記者たちは特別機の中で首相と記念撮影をする。外遊で批判的記事が見当たらないのはそのせいだろう。
安倍首相側近といわれた元テレビ局記者が逮捕を免れたのは、官邸が警視庁に圧力をかけたからと被害者という女性が記者会見で告発した。真偽はわからぬが、森友学園、加計学園問題などを見ていると、本当かもしれないないと思わせてしまうような怪しい雰囲気がこの政権にはある。安倍首相一強と言われ、物が言いづらくなっている日本。トランプ批判の手を緩めないアメリカを少しくらい見習ったらどうか。

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