「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
22.出会えた人出会えなかった人 美空ひばりその1
歌を通していろいろな人に出会った。出会いたくとも出会えない人もたくさんいる。これから会ってみたい人もたくさんいる。会いたくとも会えなかった人から書く。
美空ひばり。紅白歌合戦やコロムビア歌謡大行進などで生の歌は何回か聴いている。
でも、会話ができるほど近づけたことはない。ただ、かなりのことは知っているし、歌もたくさん知っている。
美空ひばりの「ある女の詩」(作詞:藤田まさと作曲:井上かつお)「雨の夜来てひとり来て私を相手に呑んだ人」は僕のステージでの十八番だ。
島倉千代子を書いたときにほぼ同じぐらい勉強したのが美空ひばりだった。
ひばりを理解することが島倉千代子を知ることにつながった。この人の歌のうまさはいまさら指摘するまでもないが、低音の迫力が魅力を倍加していると思う。
亡くなる直前の「みだれ髪」(作詞:星野哲郎作曲:船村徹)「髪のみだれに手をやれば 紅い蹴出しが風に舞う」はいまでは考えられない同時録音、それも一発だったという。
いまはテイク1から始まって7,8回録音していい部分だけをつないだりしているし、楽器ごとに録音しそれを重ねたりする。
またコンピュータでの修正も当たり前になっている。病み上がりのひばりは一度練習して二度目はもう録音したという。
このときのひばりのすごさを星野、船村両巨匠から聞いたことがある。
みだれ髪/美空ひばり(1987年)