「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
23.出会えた人出会えなかった人 美空ひばりその2
島倉はひばりを尊敬していた。私的な会話の中でもひばりさんと呼んでいた。
「車屋さん」(作詞作曲:米山正夫)「ちょいとお待ちよ車屋さん おまえ見込んでたのみがござんすこの手紙」や「悲しい酒」(作詞:石本美由起作曲:古賀政男)「ひとり酒場で飲む酒は 別れ涙の味がする」などたくさんのひばりの歌を歌っている。
同じ歌でもひばりと違ったテイストの曲になっていたと思う。
美空ひばりで驚くのはその文章能力である。
小学校入学前から歌手だったひばりは、おそらくほとんど学校教育を受けていなかったのではないか。そんなことが信じられない程彼女の書く文章は実にしっかりしている。話もうまい。島倉千代子も人知れず言葉の勉強をしていたが、やはり偉大な歌手になるためには歌がうまいだけではだめなのだとひばりを見て思う。
代表曲「悲しい酒」は男性歌手北見沢惇のために書かれた曲だった。北見沢ではヒットせず、北島三郎、アントニオ古賀も挑戦したことがある。
結局、この難しい歌はひばり以外にはだれも歌えないということだったのだろう。余裕を持ってファルセットを歌うひばり。
この真似はだれもできない。苦しさを隠し切れなくなるのだ。
悲しい酒を歌う美空ひばり