「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
28.出会えた人出会えなかった人 青木美保
「夢一輪」(作詞:あらきとよひさ作曲:五木ひろし)「あなたの心のお守りにせめて私がなれるなら」を歌った青木美保はどうしたのだろう、もう歌手をやめたのだろうか、と案じていた。
夢一輪の独特な歌い方、どこにも力が入っていない、それでいて、胸の奥まで突き刺さるように響く。ずっと記憶に残っていた。
探したら、青木美保は十年以上歌が歌えなかったという。「突発性痙攣性発声障害」で声が出なくなったのだ。
思い出してみたら、青木美保の歌を自分がずいぶん聴いていたことがわかった。
「舟宿にて」(作詞:山田孝雄作曲:三島大輔)「かもめになれたらいいだろな 飛んで行けるわあの海へ」「哀愁海峡」(作詞:西沢爽作曲:遠藤実)「瞼とじても あなたが見える 思い切れないその顔が」。
船宿にては浅田美代子の、哀愁海峡は扇ひろ子のカバー曲だが、青木があまりにうまくて、僕は青木のオリジナル曲だと思っている。
青木美保は五木ひろしのファンクラブ主催のカラオケ大会で歌って認められ、プロデビューした。歌謡界関係のパーティーで五木ひろしと立ち話をしたとき、青木美保の話をした。「もう島倉さんも亡くなられたのですから、これから青木美保よろしくお願いしますよ」と言われた。
青木と五木が夢一輪をデュエットしている映像がある。感激で青木は途中で歌えなくなり、それをギター弾き語りの五木がやさしく歌い継ぐいまや伝説のシーンだ。
青木美保の青木は五木の事務所が当時あった青山の青と五木の木からとった芸名。
「海鳥よ」(作詞:たかたかし作曲:徳久広司)「そんなにわたし欲張りじゃないわ 平凡でいいから 一つ屋根の下」の復帰第3作でいい味を出している。
夢一輪をデュエットしているワンシーン