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「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
38.出会えた人出会えなかった人 船村徹
作曲家、船村徹は美空ひばりや島倉千代子、村田英雄、ちあきなおみ、大月みやこ。いろいろな大歌手に曲を提供しているが、僕は船村徹の弾き語りが一番好きだ。
「僕がねぇ、島倉千代子に書いた曲で、何が好きなの」と訊かれたことがある。普通なら「東京だヨおっ母さん」か「哀愁のからまつ林」と答えるところだろう。
島倉千代子の代表曲のこの2曲ももちろん好きだが、ぼくは「里子月夜」(作詞:高野公男作曲:船村徹)「生みの親より育ての親の 背で見た夢 いくつやら」と答えた。作詞はあの盟友、高野公男。「里子」といういまは死語になった言葉が珍しくなかった時代の歌である。
島倉千代子以外の曲では「都の雨に」(作詞:吉田旺作曲:船村徹)「故里を 想いださせて 降りしきる 雨は絹糸」「新宿情話」(作詞:猪又良作曲:船村徹)「新宿は西口の 間口五尺のポンタの店が」をあげた。
「ふーん」と腕を組んでぽつりと言った。「変わっているね」。表情は少し嬉しそうだった。
そのときは挙げなかったが、もっと好きな、大事な歌は別にある。
一つは「男の友情」(作詞:高野公男作曲:船村徹)「昨夜(ゆんべ)も君の夢見たよ なんの変わりも ないだろね」、もう一つは女子刑務所を訪問した折に作った「のぞみ(希望)」(作詞作曲:船村徹)である。
「ここから出たら 母に会いたい おんなじ部屋で ねむってみたい そして そして 泣くだけ泣いて ごめんねと おもいきりすがってみたい」。2番がとくに胸を打つ。「ここから出たら 旅に行きたい 坊やをつれて 汽車にのりたい そして そして静かな宿で ごめんねと おもいきり抱いてやりたい」。
この歌を何度聴いたことか。船村以外にもたくさんの歌手が歌っているが、岡田しのぶがいい。