四国新聞「愛しき日本」より

東京都議選  真の敗者は“友だち主義”


 東京都議選の真の敗者は安倍首相である。安倍首相の“お友だち優遇主義”に東京の有権者がレッドカードを突きつけたのだ。森友学園、加計学園問題、なぜか依怙贔屓し続ける稲田防衛大臣、同じ派閥の豊田真由子代議士、そしてトドメは側近の下村都連会長の献金疑惑。これらの疑惑がまったく解明されぬまま選挙戦に突入した。高水準だった内閣支持率は急落し、盤石に見えた「安倍一強」の石組みは音を立てて崩れ始めている。

 小池東京都知事率いる「都民ファースト」の大勝利なのだが、自民党の議席半減という結果を見ると自民党の自滅という形容のほうがふさわしい。敗北の公算大とは予想していたが、ここまでとは思わなかった。とりわけ1人区2人区での惨敗は東京都民が自民党をまったく信用していないという表れだ。前回まで自民党に投じられた票のかなりの部分が都民ファーストに流れたということになる。

 それにしても、憲法にふれるような問題発言をした稲田防衛大臣をなぜ辞めさせなかったのだろう。「誤解されかねない発言」として「撤回」したが「説明責任をきちんと果たした」(菅官房長官)とはだれも思っていない。あそこまではっきりと「自衛隊、防衛省、防衛大臣としてもお願いします」と言い切れば、誤解する余地などなく、だれもが正しく理解したからこそ問題があると感じたのだ。これまでも度重なる失言や虚偽の答弁、安倍首相のお気に入りらしいが、あそこで毅然と罷免していれば、結果はいくらか違ったのではないか。

 森友学園も加計学園も政府の対応に納得している人は極めて少ないだろう。きちんと説明せずに強制捜査に踏み切ったのは籠池理事長の言う「国策捜査」という批判に一定の根拠を与えている。情報を公開しないことがさらに疑念を深めさせている。「怪文書」(菅官房長官)が実在する文書だと判明し、「出会い系バーに通う」(読売報道)前文科事務次官が、実はかなり立派な人物だったりと政府側からの「印象操作」はことごとく失敗した。

 トランプ米政権と似ていて、安倍政権もメディアを選別する。選ばれたメディアは好意的な記事を書くし、幹部が首相と会食もする。いつの間にか「権力をチェックする」というジャーナリズムの基本が忘れられてしまっていると海外から指摘される事態に陥っている。

 都議選の結果は次の衆院選に影響するというのがこれまでのケース。いまのままでは年内の解散・総選挙は見送らざるを得ないだろう。衆参両院で憲法改正発議に必要な3分の2の改正勢力を保持しているのにわざわざ減らすようなことはしないだろう。都議選の惨敗で自民党内で安倍批判が強まることも考えられる。

   安倍首相は8月前半に党役員人事・内閣改造に踏み切る考えだが、それによって人気挽回となるかどうか。人気のある小泉進次郎氏を農水相か厚労相に起用する案も噂になっているが、本人が断る可能性もある。

 閣僚が問題を起こすのは政権全体に緩みが生じているからだといわれるがそうではない。政治家のレベルが落ちているのだ。いかにしてポストにしがみつくか、次の選挙で当選するためには何が必要かとそれしか考えていない。何のために政治家になったのか、何をしたいと考えているのか。早く輝けるポストにつきたいという出世欲は自民党の場合、女性議員のほうが強いと思われる。

 都議選敗北で政局、とくに自民党の党内情勢は液状化してくることが予想される。来年9月の総裁選に向けて石破前地方創生担当相、岸田外相、場合によっては麻生副総理などが動き出す可能性が高い。そこで注目すべきなのは8月の人事。とくに加計学園問題の対応をめぐって安倍首相と確執がささやかれる菅官房長官を留任させるかどうか。本人は幹事長を希望しているといわるが、その場合、二階幹事長をどう処遇するか。この二人を野に放てば、たちまち政局激動につながりかねないだけに首相の判断は難しくなる。

 いずれにしろ説明責任を果たしていない森友、加計両学園問題をどう処理するのか。都議選敗北のまま何の手も打たないのでは安倍政権は立ち往生することになる。きめ細やかな世論対応を考えないと展望は開けてこないだろう。

 

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