= イントロをしっかり聴こう! =
カラオケの話が少し長くなりましたが、とてもわかりやすいのでもう少し引っ張ります。ある地方でテレビ放映されるカラオケ大会の審査員を引き受けた時のこと。1コーラスづつ5人歌ったのち全員を並べて一人ずつ評価コメントをする番組で、さすがに最初に歌った人のコメントは5人聴いたあとはキツイ。しかし、だれに対しても変わらない姿勢でコメントしようと決めました。
ちょっとリズムの崩れた人にコメントしました。「イントロが8小節カッコいいフレーズが流れるのですが、そのときちゃんと聴いていましたか?」
なんという変わったコメントなんだろうと歌ったご本人も、観客もきっと思ったに違いない。「はい?いつものカラオケなんでとくに気にしてはいませんでしたが?」「はい、ちゃんと聴いたつもりなんですが、今日の音源はいつものと違うという意味ですか?」「イントロって最初の歌前に流れるやつですよね!?」ほぼ半分以上の人がトンチンカンな予想どおりの応えでした。
編曲家はイントロが唯一オリジナル的な創作フレーズです。いかにかっこよく、あるいはシックにおしゃれに、あるいはダイナミックにとその才能にかけて前奏を作っています。ある意味、メロディだけを作る作曲家以上にその楽曲のことを深く練ってより良く歌が映えるようにと作られていると作曲家の(メロディ屋)の立場でいつも感謝しています。
石川さゆりさんの「天城越え」、坂本冬美さんの「夜桜お七」、小田和正さんの「ラブストーリーは突然に」など、そのイントロを聴くだけで楽曲をすぐ思い出します。このイントロが流れている間にドラマに入り込む自分にスイッチを入れ準備をするのです。リズム、ノリ、フィーリング、など優秀なピッチャーと同じようにウォーミングアップをして臨みたいものです。
たとえ聞き飽きるほど知り尽くした楽曲であってもナメてはいけない。気持ちを引き締めてしっかりイントロを「耳」に入れこんで歌い出してほしいと思います。
残念ながら、カラオケ文化という「想定内音楽」のために、どんどん「耳」が悪くなっている歌手が増えてきているようで心配です。