テレビを見ているとさまざまな評論家がいろいろなことを言うけれど、よくわからない。 私は1990年10月、当時の日本社会党土井たか子委員長に同行して北朝鮮へ行ったことがある。27年も前のことで金日成主席の時代である。
新聞はこのころまで「北朝鮮」とは表記していなかった。「朝鮮民主主義人民共和国{北朝鮮}」と書くか「北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)」と書くかであった。前者は朝日、後者は読売だったように記憶している。戦後しばらく中国を「中共」と表記していたのによく似ている。
私は3日ほど平壌に滞在し、土井委員長とともに金日成氏に会った。そのころの北朝鮮と今では、基本的には変っておらず、むしろ「独裁色」はいまのほうが格段に強まっていると思う。
金日成氏に会ったあと文化体育館で行われた式典に案内された。長い主席の演説のうしろに息子の金正日の姿があった。映像でもめったに見ることのない正日氏を見て、少し興奮したのを覚えている。何しろ海外で正日氏の声を聞いた人はだれもいないと言われていたのである。話すことができないのだという説まで流れていた。
金ファミリーは3代にわたって謎に包まれている。独裁体制を維持するためにそうしているのか、結果としてそうなったのか。中でもいまの指導者金正恩氏がもっとも神秘性が高い。国家の最高指導者に就任してから6年になるのに、中国の習近平主席とさえ会談したことがないし、一度も国外へ出かけていない。父親の正日氏は決して飛行機に乗らなかった。ロシアへは陸路を使っている。おそらく暗殺を恐れてのことだろう。70人もの北朝鮮幹部を粛清したといわれる正恩氏、実兄や叔父を殺すぐらいだから、同じことを他人もと恐れているのだろう。