「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
17.歌い手遍歴その1
ボーイ・ソプラノだった。青森の小学校六年生のとき音楽の先生に言われて、NHKの「声くらべ腕くらべこども音楽会」という番組に出た。
歌ったのは「日本アルプス」(作者不詳)。
「雪をかむれる高山の空にかぎれる気高さよ」が歌い出して高音が続く。60年たったいまでもたまに口ずさむことがある。
不思議と本番であがったりしなかった。それからいままであがる、ということがほとんどなかった。というか、あがるとどうなるのかということがわからないのだ。
人前で歌ったのは次に八王子市の市民のど自慢大会だった。カラオケなどない時代で、生バンドだったような気がするが、高校生だった。
前述した真山一郎の「王将」。バンドの音が大きく、自分の声を見失ってしまい、ひどい結果だったと思う。もしかすると、このときは少しあがっていたのかもしれない。
その後は学校のコンパやスキー合宿などで歌うことがかなりあった。
定番だったのは小林旭の「さすらい」(西沢爽作詞狛林正一作曲)「夜がまたくる思い出つれて、おれを泣かせに足音もなく」というハイトーンの歌である。
あとは松島アキラの「湖愁」(宮川哲夫作詞渡久地政信作曲)「悲しい恋のなきがらはそっと流そう 泣かないで」。
大ヒットした歌だ。
さすらい/小林旭(1960年)
湖愁/松島アキラ(1960年)