昭和歌謡裏話、こぼれ話

田勢康弘の昭和歌謡裏話、こぼれ話/ 「歌い手遍歴その7」


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「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス

35.歌い手遍歴その7

歌をきちんと習ったことはない。自分の歌をテープなどで聴いたこともあまりない。だからちゃんと歌えているのかどうかわからない。「うまくなりましたね」などと言われるが、あまり信じていない。
ただ、たくさん歌を聴いてきたし、このごろはカラオケ大会の審査員を頼まれたりして人の歌を聴くことが飛躍的に増えた。

8年間続いた報道番組「田勢康弘の週刊ニュース新書」(テレビ東京系列)で、ときどき音楽をテーマにしてきた。テナーサックスのソニーロリンズ、クミコ、船村徹、山崎ハコ、小田純平などがスタジオで生演奏してくれた。

作曲家弦哲也。いまや大物作曲家だが、彼の楽曲は昔から注目してきた。同じ演歌でも作曲家がピアノを弾いて曲作りをする人と、ギターで作る人では少しばかり違いがあるように思う。弦哲也はギター。
作家の五木寛之が僕にこんな話をしたことがある。「弦さんはね、ギター持ってきてぼくの詞に目の前で曲をつける。ぽろぽろんと弾いて、これはどうです、とか言って歌うんだ。もともと歌手だから歌がうまい。いい曲だな、と思って完成して歌手が歌ったのを聴くと、そうでもないんだよね」。弦哲也のギター弾き語りは一級品である。

その弦哲也が番組に出て弾き語りをしてくれることになった。「希望する歌ありますか」と打ち合わせに行ったスタッフを通じて話がきた。石原裕次郎が最後にハワイでレコーディングした「北の旅人」(山口洋子作詞弦哲也作曲)「たどりついたら岬のはずれ 赤い灯がつくぽつりとひとつ」をお願いした。
亡くなる直前だったので、裕次郎はこの歌をステージでもテレビでも歌っていない。にもかかわらず裕次郎のたくさんある歌の中で「もっともカラオケで歌われる裕次郎曲」なのである。「北の旅人」という題の歌を作りたいと北海道を弦哲也が旅をしてイメージをふくらませ、山口洋子に頼んで詞ができた。

その歌で、わが身にとんでもないことが起きたのである。

番組に出ていただいた時の一枚

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