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「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
42.出会えた人出会えなかった人 南こうせつ
南こうせつを僕の世代で知らない人はいない。
「神田川」(作詞:喜多条忠作曲:南こうせつ)「貴方はもう忘れたかしら 赤いてぬぐいマフラーにして」は青春の記憶と重なっている。
僕自身は「夢一夜」(作詞:阿木燿子作曲:南こうせつ)が好きだった。島倉千代子は一度この歌をステージで歌いたいと思っていたようで一時期、よく口ずさんでいた。島倉千代子一周忌のとき「夢一夜をよく口ずさんでいましたよ」と伝えたら南こうせつは驚いていた。
その南は島倉千代子の文字通り最後の曲になった「からたちの小径」(作詞:喜多条忠作曲:南こうせつ)「なつかしい歌を誰かが歌ってる 遠い日の思い出がよみがえる」を作った。
一周忌のとき、品川区にある島倉千代子の墓の前で、南こうせつはアカペラでからたちの小径を歌った。感動的だった。一周忌の法要のとき、僕と南こうせつは隣り合わせたが、和尚さんの般若心経を大きな声で諳んじている。すごいな、と思って聞いてみたら「寺の息子ですから」という答え。
死の直前の自宅での録音。この曲がどれだけ島倉千代子の人生の最期を素晴らしいものしてくれたか。「こうせつさん ほんとうに有難うございました」と僕はお礼を言った。島倉千代子が南こうせつに掛けたお礼の電話の声の録音が彼経由で僕のスマートフォンに残っている。1分25秒 そのすべてを記録として掲載する。
“こうせつさん ありがとうございました。私の部屋の中にスタジオができて それで私はできるかぎりの声で歌いました。自分の人生の最期にもう二度と見られない風景を見させていただきながら歌を入れられるって こんな幸せはありませんでした。でも、とってもみなさんのあたたかいお心でこうして歌わせてもらえることを 幸せに思います。人生の最期にすばらしい すばらしい時間をありがとうございました。出来悪いところいっぱいあると思いますが みなさんがオーケー出して下さったので 私は それをうまく作り上げてください。よろしくお願いいたします。今日はほんとうに ほんとうにありがとうございました。”