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「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス
45.出会えた人出会えなかった人 若草恵
本名は斎藤徹。なぜ本名をわざわざ書くかといえば、彼の父親は斎藤久。歌謡曲の作曲家で、僕の郷里の山形県白鷹町の町民歌の作曲をしている。
郷里近くの米沢から出たコロムビアの歌手山形英夫と島倉千代子の「新庄ばやし」を書いていることは「山形英夫」の回で記した。
郷里が同じ山形ということで、合う前から若草恵のことはかなり知っていた。その話を山崎ハコにしたら、仲良しだというのでハコの旦那のギターリスト安田裕美を交えて築地の鮨屋で会った。
そのことが縁で白鷹町立白鷹中学校の校歌を僕、ハコ、若草恵3人で作ることになったのだから、これもまた巡り合わせである。
その校歌のレコーディングのとき、早めにスタジオについたら、若草恵は知らない歌手のレコーディングに立ち会っていた。挨拶したら「この歌手はひばりの歌なんか歌わせたらすごいですよ。聴いてみてください」と言った。
レコーディングが終わり、その女性歌手が目の前に現れた。若草恵は「この人は作詞家としての名前があるけど、歌手の名前をつけてやってください」と僕に言う。いろいろ考えてその日の夜だったか「八木重子」という芸名を若草にメールした。それが縁でこころ歌の仕事で世話になっているが、ご本人は「芸名をなんて若草先生にお願いしたことはありません」と言う。真相はわからない。
八木重子が歌っているのは「蛍の刻(とき)」(作詞野辺山翔作曲若草恵)「川の瀬音が心にしみる あなたの腕に抱かれて聞けば」で作詞は歌手本人である。
編曲の多かった若草恵は最近は作曲もたくさん手がけている。この人の体の中にはフランス映画の音楽のようなメロディーが流れていると思う。
課題曲「スター」(作詞:清志郎 作曲:若草恵)「もういいじゃない これから先も スター それは無理さ」は演歌のような歌詞なのに見事なシャンソンに仕上がっている。こころを伝える歌を追求したいと考えているぼくにとって、きわめて大事な音楽の師であり、同志である。