これからはライブがいい!と言うが、作家に著作権料は払われているのか?というお話である。
音楽産業、とくにCDのようにパッケージメディアと称されるモノに録音して売るビジネスはどうにもならないほどの衰退である。ところが、ライブは好調のようである。
ぴあ総研の発表によると、2015年度の「ライブ・エンタテインメント市場」は5000億円を突破した。調査を開始した2000年度と比較すれば約2倍の拡大であり、その中でも「音楽」が2014年から25.2%も増加していて市場規模は3405億円とエンタメ全体の約70%、観客動員も25.7%増の4486万人と好調を報じられている。
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「××フェス」と呼ばれるビッグイベントや、「握手券付きのCDを買って参加する」というアイドル系のイベントなどの売り上げが巨額なのであろう。一方、小規模なライブもたくさん行われており、メディアから音楽を聴くことより「生の音楽」に触れる「体感」に人気がる。
話が飛ぶが、そこに東京オリンピック問題がある。ビッグイベントが頑張りたいのに、会場が足らないのである。
日本武道館、代々木第一・第二体育館、幕張メッセ、東京ビッグサイト、東京国際フォーラム、国技館、東京体育館、さいたまスーパーアリーナ、東京スタジアム、横浜スタジアム、有明アリーナ、など数千人を収容する大会場が、これからのオリンピックを迎えての改修や、関連イベント、準備などで自由に使えないらしい。
そうなると、よけいに中小の規模のライブが盛んになって、本当の意味でアーティストの息づかいに触れるようなライブハウスでのコンサートが増えて結構なことだとも思っている。
そんな時に、頭から水をかけるような記事に遭遇した。
「「JASRACからの分配、1円もない」 爆風スランプ・ファンキー末吉さん、文化庁に調査求める」
http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/17/sueyoshi-comdenns-jasrac_n_17773358.html
「爆風スランプ」のドラマー、ファンキー末吉さん(58)が8月18日、ライブハウスからの著作権料振込がないと、JASRACの業務改善命令を出すよう文化庁に上申書を提出した。
「コンサートホール」など大きな会場の場合は 作家はJASRACの管理楽曲ごとに使用料を受け取ることが確立されている。一方、「ライブハウス」の場合は、管理楽曲ごとではなく、月額が決まった「包括使用料」として著作権料をJASRACに支払っているが、その分配を一部の「モニター店」での演奏実績を基にしたサンプリング調査による統計的な分析で、上位の作品を優先的に支払っていくというシステムである。
爆風スランプとその仲間がこの10年間に全国で204回ものライブを開き、自作品を演奏したのに「1円も入っていなかった」ということが主張で、このサンプリングとモニターがそもそもおかしいのではないかという訴えである。いや、訴えではなく、「こちらのことが正しいと断定しているということではなく、われわれの認識を文化庁に報告し、それに対して調査の上、適切な判断をお願いしたいという趣旨です」と話したと訂正したい。
これに対しJASRACの答弁は、サンプリング調査について年間の著作権料徴収額全体のうち2%未満とした上で「統計学に基づいた一定の正確さはある。不透明という批判は当たらない」と朝日新聞に載っていた。
言い換えると、ライブハウスの著作権料売り上げは、全体の2%と小さいので大事件ではない。サンプリング方式は統計学的に正しいので不正はないと聴こえる。
JASRAC会員の一人として、同会の業務の正確さや、高い技術で楽曲管理システム業務を遂行していることは疑いなく信頼している。
しかしながら、いつまでもトレーシングが確実なCDなどのメディアビジネスや、届がしっかりしているビッグイベントなど、かつての音楽的高度成長期のビジネスモデルを中心としたやり方でいいのだろうかと疑問がわく。新しい「体感」する音楽がいかに「ファン」を増やして、10年後、20年後の音楽ビジネスの発展に貢献するかという方向に動いて欲しいものである。