これからの音楽は“コミュニティ的なファンクラブ”を作り上げ、みんなが寄り集まり、「体感、共感、共有」中でそれを育てていく「エコシステム」のような音楽ビジネスにしていかないとなかなか難しいという話を書いた。
しかし、そもそも「エコシステムって何?」「ピンとこない、わからない?」と何人もの方から熱心に問われた。
「エコシステム(ecosystem)」とは生態系を指す英語で、地球上のあらゆる動植物の食物連鎖や物質循環といった生物群の循環系を表す意味である。ちょっと違うかもしれないが、「風が吹けば桶屋が儲かる」のお説のように、「何が何して何とやら」という例えを話のきっかけにしてもいいかもしれない。
最近では、経済分野などビジネスにおいて、いくつかの企業が商品開発や、新規事業企画、においてコラボし、お互いの資本や技術、顧客などを提供し合い、とくに業界の枠を超えて異業種間などの共存共栄をする仕組みを「エコシステム」と呼ぶ。
では、音楽の世界ではどうか?という意味で、前回紹介したのは昨年流行った「君の名は。」という映画と、そのテーマ曲「前前前世」を歌った「RADWIMPS」だった。
彼らの映画に絡めて、小説、漫画、ムック本、美術画集、DVD、と、ありとあらゆるタイアップ商品ビジネスの展開や「本編映画を見ながら大合唱コンサートをやりましょう」「コスプレで参加しましょう」「RADWIMPSと東京フィルハーモニーオーケストラの演奏で、もう一度映画を楽しみませんか」などを企業や団体との協力で作り上げている。結果ファン作りのための参加型、体験型、そしてみんなで熱い想いを共有して共感しよう!というビジネスモデルの勝利と言える。
「ただこれは大きな企業やメジャーな人達だけの話でしょう!?」というのが多くの人の疑問であった。
たしかに、この図を見ても自分でコツコツと歌手活動を続けたり、インディーズで頑張っている若いアーティストには「関係ない!」と見えてしまうようである。
いやいやそこがこのアイデアを自分にどう活かすかが重要で、これからのアーティストは自らが起業家となってオーナシップを持つべきなのである。
映画の代わりにYOU TUBEという動画配信がある。写真集の出版は難しくてもいい写真を撮ってインスタグラムにアップする方法がある。これは、写真とビデオを撮影して編集してネットにアップしてくれるお友達を作ればいいのである。高校生や大学生あるいは家族のアルバイトでもOKである。
また、漫画家志望の若者にアルバイトで似顔絵的イラストを描いてもらって、LINEやFace Bookなどを通じてライブの告知やプロモーションが出来る。
そして、どこの町にも若者のロックバンドや、ジャズをやっている人たちがいると思う。概してみんな金欠病でアルバイトを欲しがっている。お決まりのカラオケ音源をかけて歌うのではなく、こういう人達と組んで「生バンド」で歌うのである。探すのも、頼むのも大変だと思うが、ここにいろんな出会いと音楽の刺
激の相互作用が生まれる。
つまり、何も大げさに考えなくともこの「エコシステム」はみんなの周りの小さなコミュニティでもスタートはできるということである。
何百万円をかけてメジャーレーベルからいわゆる「全国発売」というCD自費出版をし、押し入れに何百枚もの売れ残りを抱えるのであれば、その投資をこうして仲間作り、「創作コミュニティ」的ファン作りとプロモーションに振り向けたほうがいいのではないかと思う。
ただし、それでも作品だけは作詞、作曲、編曲、レコーディングとしっかりしたコンテンツを作らないとダメである。いいものを追っかける人じゃないと、誰も振り向かない。
私達はこころ歌大使の活動をこのあたりから支援、そして一緒に活性化して「歌謡曲ルネサンス」を目指している。