韓国のゴルフや、オリンピック選手が国の養成で世界的なメジャープレーヤになったり、韓流映画やK-POP歌手の人気がグローバルに流行ったりが国策に依ることを前回書いた。
日本でも高度成長期は、多くの大手電機メーカなどスポンサーが、自らレコード会社を支えて「ソフト(音楽)」を作り、それを聴くための装置である「ラジオ、テレビ、ステレオセット」を大量生産して販売し、それをプロモーションする放送局、新分野雑誌などのメディアにたくさんの広告費を出していた。いういわゆる「エコシステム」という循環作用による経済ループがうまく回っていた。
つまり、大衆音楽が育つための環境を経済産業の活性化のための宣伝としてうまく機能していたという極論もできる。そのころの潤った音楽産業は、いろいろ「遊びやチャレンジ」ができたし、まだ国民の趣向が「映画」「テレビ・ラジオ」「レコード」くらいしかなかったことも相まって、大きな需要と供給の成長バランスが成立していた。
韓国では国を挙げてコンテンツ(創作物)の振興に力を入れている。
『韓国コンテンツ振興院は2009年5月7日、文化産業の振興発展をサポートするため、文化産業振興基本法31条に基づき、韓国映像産業振興院、韓国文化コンテンツ振興院、韓国ゲーム産業振興院、文化コンテンツセンター、韓国ソフトウェア振興院、デジタルコンテンツ事業団をひとつに総合して設立された公共機関です。』
韓国のコンテンツ産業が創造経済をリードするグローバルリーダーに成長できるように国として支援事業を繰り広げており、日本、アメリカ、中国、ヨーロッパなど主要な諸外国にも事務所を置いている。音楽コンテンツに関する具体的な事業としては、さまざまなジャンルのミュージシャンの発掘、戦略的な広報支援を通して韓国内の音楽産業の創作底辺拡大をサポートしている。
また日本事務所では日本コンテンツ産業のデータを収集、流通システムを把握し、それらのマーケット情報を韓国企業に提供、さらにはトータル・コンサルティングまで行っている。
以下が、日本語サイト
『韓国コンテンツ振興院 (KOCCA:Korea Creative Content Agency)公式webサイト』
https://www.kocca.kr/jp/main.do
国が法律を整備し、予算を出して支援しているわけである。しかも、日本では「民間の経済原理に任せるべき」と言いそうな分野である、放送映像やゲーム・ソフトウェア、文化、音楽などの育成、サポートをしている。
また、大学及び機関の連携サポート、韓国内の大学やアカデミー、海外優秀大学を連携して創意的な企画者及び優秀技術を開発するための人材養成などコンテンツ分野の正規教育機関(高校、大学)のサポートを通した専門人材の養成にも国を挙げて力を入れている。
そして、韓国では『大韓民国大衆文化芸術賞』という表彰制度がある。
大衆文化芸術家の社会的地位を向上し、彼らの努力と成果を励ますために用意された、文化芸術家に対する最高権威の褒賞制度だ。Webサイトでは以下のように説明があった。
「大韓民国大衆文化芸術賞は大衆文化芸術家たちの社会的な地位を高め、彼らの努力と成果を奨励する文化芸術家のための政府褒賞授賞式。歌手から俳優、お笑い芸人などが対象で、毎年韓国の芸能界を輝かせたスターたちが受賞しています。」
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この中には映画スターや、タレント、歌手などたくさんのアーティストが表彰されているが、驚くのは日本の歌謡曲や演歌に相当するトロットの歌手なども含まれている。
(トロット(트로트)は、韓国における大衆楽曲のジャンルのひとつである。日本の演歌と酷似
した性格を持つため、しばしば韓国演歌と呼ばれることがある。トロット: Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88 )
つまり、国が大衆歌謡を顕彰、表彰しているということである。
日本で言い換えるなら、「レコード大賞」や「日本アカデミー賞」「漫才大賞」を文化庁主催で行っているようなものであると言える。
大衆文化は本来大衆が支えるべきであるという固い意見が聞こえてきそうである。
しかし、昨今の極端な西洋化や、デジタル化、IT化、そして経済システムはありとあらゆるものを同化し、歴史や伝統文化を蝕んできた。
保護が必要なのは遺跡や神社仏閣、日本カワウソだけではない。
絶滅とは言わないが、日本の大衆歌謡にも「歌謡曲ルネサンス」が必要で、ぜひお上のお力を借りたいものである。