音楽著作権に関わる使用料を管理・徴収しているJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)が映画音楽の上映権使用料の値上げを目指して動き出した。11月9日の朝日新聞朝刊の社会蘭に掲載されていた。
これは、ネットニュースでも詳しく報じており、JASRACの幹部や、前会長・現特別顧問で著名なでもある作曲家の都倉俊一氏や、坂本龍一氏のコメントも報じられていた。
BuzzFeed NEWS
「JASRAC、映画音楽の上映使用料を引き上げへ 劇場側は「死活問題」と反発」
上映1本に付き18万円固定であった外国映画ついて興行収入の1~2%を映画館側に要求すると言うものである。映画の中に録音されている音楽の再生につき、その著作権使用料を固定から累進課金方式に変更するということである。
これに対し、映画業界は「無謀とも言える要求だ」と猛反発している「人件費や、家賃が高い日本の映画館上映の環境を理解していない。倒産するところも出る。チケット代値上げになる可能性が高く、映画ビジネスに大きく影響する」などが理由である。
JASRACとしてはフランスや、イギリス、ドイツ、イタリヤなど多くの欧州ではすでに使用料を興行収入の1~6%と規定しており、日本でも国際水準のこうしたレベルに早く持っていきたいとのこと。
そして、それをJASRACなどアジア地域の著作権団体で作るアジア・太平洋地域音楽創作連盟(APMA)の東京開催の総会での「東京宣言」を採択し、JASRACの方針を大きく指示した。
実は、私はこの総会に出席していた。
別に、どこを代表して出席したわけではないが、JASRACの会員として案内があったので応募して聴講したというだけである。私のあやしげなリスニング力の心配もなく、通訳イヤホンのおかげで貴重な国際会議の席に参加できた。
正しくは、CIAM(国際音楽創作評議会)の総会が東京で行われた。これは、WIPO(世界知的所有権機構)の指針により、音楽創作者への報酬と権利の保護を目的に作られた世界的作家団体で、この中でアジア・太平洋地域のグループであるAPMA(Asia-Pacific Music Creators Alliance:会長都倉氏)が、欧米並みの著作権料を映画からとることを宣言し、みんなから同意されたということのようである。
私は一作家として、これは当たり前で正しいことだと思うし、「欧米並みならいいじゃん」と思ってしまう。
しかし、どうして昨今JASRACの著作権徴収に関しては、メディアの紹介の仕方かもしれないが、
どんどん税を重くして、弱者を苦しめるという風に一般的には報道されてしまうのであろう?
少なくても、前回の音楽教室の話もそうであるが、正しいまともな業務を遂行しているはずのJASRACが取り立ての厳しい「お上」みたいなイメージに映るようで、多くのブログ読者からもそのいきさつを詰問されて、なにも答えられなかったのは事実である。
少なくとも、この国際会議に出席して各国の事情に触れてみると、作家にとって大事な権利を守ろうと実にまともで、正しい議論ばかりである。
確かに世界各国で行っていることは、相互信頼関係を構築するためには基準を合わせるべきであろう。要はメディアも巻き込んでもっとうまく音楽著作権保護の重要性を優先する「世論」を作るべきなのではないか。その意味で、時間軸操作も含めて、宣伝、プロモーション不足は否めない気がする。
一方欧米はそんなことより、いかに「Google」や「Spotify」に仕切らせないで、もっと条件良く著作権料を徴収するための方策を議論することの方に重心がある。言い換えると、新しい「プラットフォームビジネス」の勝者たちとどう取り組んでいくか!?という切迫した話である。
日本は遅れているというより、かなりセンスがずれたまま現状の難問にしんどい思いをしている気がする。
もっと音楽ビジネス全体のことを考え、今後10年、20年を見据えた議論や報道の上で今回のような局部の話をどう処理していくのか「全体解」の方向に持っていけないものなのか?と思う。