CDが売れないというテーマでいろんな話を書いてきた。
いわゆる「歌謡曲」とは大衆文化として多くの人々が「面白い!」「カッコいい!」「沁みる」「泣けてくる」といって喜んでくれたり、笑ってくれたり、涙してくれる素材を世に提供していくことだと思う。ただし、それは30年以上昔のバブル時期のビジネスモデルや、マーケッティング手法では難しくなってきている。
昔の、CD(レコード)さえ出版すれば、あらゆるチャンスがあるという時代のままでは、売れなくて当然である。
また、同時にCDという物理メディアでしか音楽ビジネスの利益が得られないとする考え方では、いつまでたっても音楽ビジネスの世界は氷河期である。
しかし、ネガティブな話だけをしても面白くない。少し前向きな話をしたい。
昨年、ピコ太郎「PPAP」がYOU TUBEで大ヒットし、世間が大いに沸いた。楽しくて、面白くて、愉快なコンテンツであった。年末の紅白にも出演して大いに視聴率をかせいだ。
個人的には、NHKの「第9」をもじった演出より、その前日12月30日のレコ大でのパーフォマンスの方が格段に素晴らしかったと思う。きらびやかなステージで、オーケストラと一緒に共演したのである。しかも、原曲のイメージをそのままにしながらもショーアップされた放送はなかなかの出来栄えであった。
CDが売れないイコール、音楽がダメになってきているとう話の流れの中で、こうしたとても素晴らしい人気を得ているエンターテイメントがいる。ここにこれから目指す音楽ビジネスの大きなヒントと可能性が含まれていると考えるべきではないだろうか?
「いや、あれはたまたまの一発屋だ」という冷たいご意見も聞こえて来そうだ。
だが、ほんとにそうであろうか?
そんなとき、今年も出てきた!
あのダンシング・ヒーローが大人気なのは皆様もすでにご存知であろう。
Part of HuffPost News 2017年08月24日
『ダンシング・ヒーロー』をバブリーな格好で踊る高校ダンス部がスゴい
平野ノラも「おったまげー!」
http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/23/Tomioka-High-School_a_23159398/
話題になりかけたのは今年の夏ごろからであるがどんどんうなぎ上りに人気が上がり、年末の紅白や、レコ大への出場も期待されている。
日本高校ダンス部選手権で常にトップクラスに君臨するダンスの名門「大阪府立登美丘高校」が披露した演技のクオリティの高さが、YOU TUBE、Twitter、LINEなどで話題沸騰になっている。
とにかくダンスがうまい。キレがいい。面白い。なにこれ?と思わせるレトロな要素をいっぱい含ませて素晴らしい演技を10代の少女達が演じている。
なぜこれがこれほどまでに人々の人気をかっさらうのか?
これを仕掛けた企画、演出のコーチの才能も只者ではない凄さを感じる。
2年にわたってヒットした、「ピコ太郎・PPAP」と、「ダンシング・ヒーロー・大阪府立登美丘高校」というすばらしいエンターテイメントコンテンツには、いくつかの共通点がある。
・YOU TUBEを中心としたネット、SNSからヒットしてきた。
・コンテンツ制作にお金はかかっていないが、アイデアと中身は良く研究されている
・なにが大衆に受けるかという要素が、結果的にはよく当たっている
・「音楽」という歌手と作品の単品売りではなく、「音楽とダンスとの組み合わせ」、「お笑い要素」、
「奇抜、レトロなどファッションと音楽の組み合わせ」、「イラスト、スタンプ化への誘い」、「モノマネ、コピーへの誘い」
など、たくさんの要素を最初から持っている。
このシリーズでこれまで書いてきた、「君の名は」で映画と「RADWIMPS」があらゆるクリエータが融合した「エコシステム」を構築した成功ビジネスと述べたが、今回の「ピコ太郎・PPAP」と、「ダンシング・ヒーロー・大阪府立登美丘高校」が巨大資本じゃなくても身近に「エコシステム」的実験は出来ることを証明してくれた気がする。
忘れていけないのは、その中に「荻野目ちゃんが歌うダンシング・ヒーロー」が蘇り、「ピコ太郎の歌?」が内在されていただけで、それぞれ単品売りをしたわけではないことである。
そして、大衆はそれを支持した。