ブレスでアクセントをつける! その1『花一花』
「今回の課題曲はどれも素晴らしい作品だけど、歌うとなるとなかなか難しい。」
最近このような話を良く耳にする。それはそうである。この大会の課題曲は、カラオケで歌いやすいような曲ではなく、心を伝える歌を書き下ろしで揃えたのだから。
「心を伝える歌を、歌手を発掘する」大会なので、課題曲に対して皆さんなりの解釈をして、オリジナリティの高い歌唱で挑戦していただくことを期待している立場ではあるが、具体的な質問をいくつか受けたので、歌う時のポイントをこのブログで少し紹介する。
「どこで息継ぎをしたらいいのですか?」
あるカラオケ大会のロビーでのこと。「ブレス」の話である。
『花一花』を例に「ブレス」ポイントを見てみる。
この作品は、前半のつぶやくような「語り」の部分と、後半の「死ぬまでに」から盛り上がるサビの部分と二つの幕がある。その前半部の語りの部分は、言葉をつぶやくように、みずみずしさをもって歌って欲しい。
楽譜協力:「月刊歌の手帖2016年7月号」
この楽譜は、カラオケを楽しむための歌謡情報誌「月刊歌の手帖2016年7月号」の課題曲part1に紹介された楽譜の最初の5小節部分である。
2小節目と4小節目に赤丸で示したところにブレス記号[ⅴ]マークが記載されている。
「これはこのよに」と歌った後、「ふたつとない」の直前に息継ぎをすることを指示している。
「はなのさくきで」の直前も同じである。
語るように歌いたいのに直前で息継ぎするのはしんどいのではという声も聞こえてきそうだ。しかし、実はここがポイントなのである。「はっ!」と言うような思いで息を吸って、すぐに言葉を発するので、「ふたつ~」の「ふ」の音にはアクセントが付く。
息継ぎ音がガバッと出ては台無しなのでこの加減が重要なのだが、このブレスポイントをうまくコントロールすることで素晴らしい語りが完成する。
このブレスポイントを記入した「歌の手帖」の楽譜は、歌う人にとって有益なものなので是非参考にして欲しい。
このことを意識して、改めて八代亜紀さんの歌を聴いてみよう。
さりげなく歌っているようでいて、言葉がみずみずしく、そして心に突き刺さってくるのは、この巧みな「ブレス」と、そして、彼女の歌に対する「心(ハート)」の為せるものであろう。