齢73 制作秘話
田勢代表から「齢 73」ってタイトルで詞を書いたから歌を作ろうと言われたとき、「はっ?よわい…?」と最初はよく意味が呑み込めなかった。しかしいただいた詞をじっくり読み進めるうちになんとなく田勢さんがなぜ今この歌を作ったのかが少しずつ分かるような気がしてきた。
誰しも年を重ねていく中でふと自分の足元を、そして昨日と明日をちょっと考える、見つめ直すことがある…。そんな感じが伝わってきた。
『身を立てず 名も上げず』。「うん、これは間違いなくギターで弾き語りしても映える、ゆったりとした4ビートのバラードっぽい感じかな?」と思い、すぐに1曲作った。また、すこしだけリズムをはねさせて歌謡曲っぽい物もすぐにできた。この2曲を田勢さんにお聴かせしたところ「どちらもいい感じですね!でも、もう少しサビを強調したり、あたま1行の身を立てずにもう少しインパクトを!」といろいろ細かい意見が出た。
その思いを一つずつ修正して改訂版をすぐに2曲作った。ただ、その間1週間くらいだったが、どうも70歳以上の人が歌う
ので、ある程度加減して歌い易い、もっと言うと平易に頭の2行ぐらいが歌い出せるなど、やや「加減した」作り方をしてきた。
「これじゃ面白くない!思い切って『Slow Rock の3連符』のリズムにして言葉をもっとポジティブにたたみ込んだメロディにしてやれ!」とばかりに途中からインパクト重視、「想定外」のメロつくりに切り替えた。そして、先の「修正作」と共にこのはじけたタイプを一緒にお聴かせした。
「ゆうすけさんなかなかいいじゃないですか!」「えっ?どれがですか?(修正タイプの2曲のどちらかですか?)」
「この新しく作ってきたタイプですよ」「ホントですか?」とのやり取りの中、今の形の「齢73」が出来上がった。
この作品はいきなり頭の「身をたてず」から思いっきりメロディが垂直立ち上がりに飛び、また低音部にもぐり込むという縦軸にダイナミックなメロディとした。横軸リズムも、歌い易い譜割りと言うよりは、言葉を活かすためにポップス的にアクセントや、リズムの「ノリ」を重視して、歌いにくい、難しいが「歌いこなせばカッコいい」と言う形をとった。
その結果、実に渋い詞の内容の割には、リズムやメロディが微妙に弾んでいて、インパクトを醸し出していて、それなりの「想定外」な作品に仕上がったと満足している。
1番のサビ「凍てつく空に 開け星出るように」の高音部は多くの方が歌うのに苦労されると思う。でも、このフレーズは一番最初の「身を立てず」からの心地よいリピート、繰り返し効果を狙っている。加えて、最後の「明日がある」でもう一度点火して高音部にチャレンジしていただく。この2段ロケット的な高音部に齢73の詞が不思議と合うのが、今回の田勢・山田組作品の到達点となった。
田勢さんはこの作品をひょうひょうと、淡々と歌われている。でも、なんとも言えない「味」があり、多くの視聴者から「シブい!」という評価を頂戴している。多くの皆様にお年を当てはめて歌って欲しい。