田勢康弘のブログ

北の微笑外交


「妹」演ずる冬のソナタ

四国新聞「愛しき日本」2018年2月19日より

「金与正(キムヨジョン)」という女性をあなたはどう思いますか?
うわべだけの微笑み外交に騙されてはいけない、という声もあるが、初めて国際舞台に登場した金正恩氏の「妹」に世界中が驚いたのも事実だ。
米国CNNテレビは「『外交のダンス』という競技が冬季五輪にあったなら、金正恩の妹は金メダルを取るかもしれない」と報じた。「兄」の金正恩氏からの「平壤への招待状」を文在寅韓国大統領に渡した「妹」は「後世に長く語り継がれる足跡を残して下さい」と語りかけた・2泊3日の滞在中、4回文大統領と顔を合わせているが、「核」は一度も話題にならなかった。

唐突な印象の強い南北首脳会談の提案に、文大統領はかなり前のめりに見える。米国トランプ政権は「憂慮」、中国は「歓迎」、日本は「反対」である。韓国の世論調査では賛成が77・4%、反対は20・5%と圧倒的だ。しかも「無条件で開催」がほぼ半数と核凍結を条件にという声と拮抗している。

「北朝鮮の時間稼ぎ」という批判は日本国内で圧倒的だ。年内には米本土に届くICBMの完成に漕ぎ着けたい、同時に日米と韓国を分断したいというねらいがあるということだ。これまで新たに核保有国となった国々には国際社会がさまざまな圧力をかけてきた。
現在の核保有国は米国、ロシア、英、仏、中国。これらは核拡散防止条約(NPT)で国際的に保有を認められている。このほかにインド、パキスタン、北朝鮮が保有を表明している。またイスラエルも保有国と見られている。すなわち核保有の意思表明や核実験には国際社会が厳しく対応するが、いずれのケースもそれによって断念には至っていない。
北朝鮮もいかに米国を中心に経済制裁をうけようとも核兵器を廃棄もしくは凍結することはないだろうというのが、国際社会の常識だ。

米国内部では核保有を認めるという前提での妥協の道以外はないという見方がかなり有力になりつつある。核弾道ミサイルを米国の領土に向けないという前提で妥協の道をという考え方が浮上している。米国とても核戦争はのぞんでいないだろう。ちょっとした軍事衝突でも世界戦争に発展する危険性もある。中国とロシアが北朝鮮側に回るとそれこそ第3次大戦になる。

安倍首相は文大統領に時間稼ぎの対話は意味が無いと強調し、冬季五輪で延期していた米韓軍事演習は必ず実施すべきだと訴えた。
「これはわが国の主権の問題である」と文大統領は不快感を示すなど、日韓の認識の大きな食い違いが明るみに出た。

日米間にも認識のズレはある。北朝鮮の核保有は絶対認められないという日本。それを前提にしてトランプ大統領と足並みを揃えて来た。米国の本音は米国領土の保全。米国はかつて日本の頭越しに中国との外交関係樹立に走ったことがある。韓国は何と言っても朝鮮半島を火の海にしないこと、願わくば米国を説得して南北会談を実現させたいということだろう。北の核保有に対して韓国には日本ほど強い拒否反応があるとは思えない。いずれ南北が統一されるときには韓国も核保有国になるのだ。

金与正氏。31歳ぐらいと言われるが正確には分からない。父親は故金正日総書記、母親は大阪生まれの在日出身の踊り子の故高英姫氏と言われている。同じ両親を持つ兄は正哲氏(現在消息不明)と正恩氏。正恩氏とはスイスで一緒に学校に通うなどとくに仲が良かったようだ。

マレーシアで殺された長兄の金正男氏は金正日氏の最初の妻が母親で異母兄である。とここまでは比較的国際社会で共通の情報とされている部分だが、ほんとうのことは分からない。
筆者の経験でも1990年に訪朝して当時の金日成主席に会ったが、そのとき大集会の演壇の主席の後ろにいる息子の正日氏の姿を遠くから認めた。当時、正日氏は話すことができないのではと見られていた。それまで彼の声を誰も聴いたことがなかったからである。

金王朝のファミリーとして初めて韓国を訪れた「妹」と文大統領との会話。
大統領「寒くなかったですか」
妹「大統領のお気遣いで寒くありませんでした」。
この短い会話に世界は驚いた。こういう気配りなどまったくない国と世界中が思っていたからである。

日米の意向に反し、韓国は首脳会談へと突き進むだろう。米韓軍事演習を延期し、南北共通の敵の日本が敗戦した8月15日(韓国では光復節、北朝鮮では祖国解放記念日でともに祝日)あたりが首脳会談開催の有力な日と見られている。いずれにしろわが国にとっては何とも微妙な問題ではある。

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