昭和歌謡裏話、こぼれ話

田勢康弘の昭和歌謡裏話、こぼれ話/ 「歌い手遍歴 その5」


「世は歌につれ」/歌謡曲ルネサンス

21.歌い手遍歴 その5

ぼくが歌うのは森進一の「命あたえて」(作詞:川内康範作曲:猪俣公章)「はなれていました長いこと おんなひとり寝 眠られず」。自分でテープを持ち込んだ。
ただ、歌いやすいようにキーを初めから下げてあるので、高音のぼくには歌えない。
いまのように簡単にキーを変えられる時代ではなかったので、一計を案じて、回転数を速めることにした。
そうすればキーが高くなる。リハーサルもなく一発勝負なので、もし係の人が回転数を速めてくれなかったら、一巻の終わり。

だが、うまく行った。会場の隅々まで歌声が届いているのがステージでわかった。
会場のハイスクールの体育館には千人ほどの人々が詰めかけていた。
出演者にはアメリカ人も3割ぐらいいて、応援団が盛り上げてくれた。
歌いながら、今日はよく声が伸びているな、と感じていた。
会場の人たちに歌のこころがきちんと伝わっていると確信した。だから、個人優勝はするだろうな、と歌い終わる前に思った。

結果は個人、団体ともに優勝。準優勝はアメリカ人の男性で「長良川演歌」(作詞:石本美由起作曲:岡千秋)「水にきらめくかがり火は 誰に想いを 燃やすやら」。
みごとな歌でのちに日本の民放テレビで優勝したという。

あれから30年たって、ごく最近、縁があって森進一さんの実の妹さんの前で「命あたえて」を歌う機会があった。
歌いながら、妹さんの目が潤んでいるように見えた。


命あたえて/森進一(1981年)

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